宮沢賢治は「雨ニモマケズ」で、ご存じの通り「雨」「風」「雪」「夏の暑さ」と言葉を並べ、後半では日照りや冷夏についてもふれた。農家の目線を感じる。一日に玄米4合を食べる、とあるから驚くが、かつての農作業はそれくらい食べないともたなかったということか
▼農家に感謝の祈りをささげたくなる季節を迎えている。実家の田んぼの耕作を委託している農場から、収穫し立てのコシヒカリの新米を届けてもらった
▼猛暑の影響が心配されたものの、8月前半の降雨に救われたという。穂肥を例年の2倍ほどに増やしたのは「賭けだった」そうだが、収量は増え、品質も申し分ない出来秋に恵まれた
▼高騰している米価について、少し怖いと今後の暴落を懸念していた。ただ「今までいかに下に見られていたかってことですよ」とももらした。安ければいいという消費者の認識は農家蔑視のようで、やりきれないものを感じていたのだろう
▼食料品が軒並み値上げされる中で、コメは経費に見合う値付けをしづらい流通の特殊性があった。稲作農家の収入は「時給10円」などとも言われたが、2023年のデータでみると一定規模の農家で時給900円弱と算出された。それでも最低賃金を下回っている
▼届けてもらった新米は、その日のうちに食した。つやつやふっくら甘い。一粒一粒が凜(りん)として自己主張しているよう…などと貧困な語彙(ごい)を駆使してみる。農家が働きがいをもってコメづくりを続けられますように。心から願う。