約7万人もの死者を出す戦闘を2年間繰り広げたイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦を受け、人質が解放された。だがそれは「脆弱な和平」の始まりでしかない。永続的な和平の礎となる信頼が決定的に欠如しているからだ。

 加えて「力の外交」を推し進めるトランプ米大統領の和平工作には危うさが漂う。信頼構築と恒久平和への第一歩に過ぎない初期の合意は華々しいが、その後、周到な手順を踏んで合意を進展させる地道な外交努力が伴わないことが多いためだ。

 例えば、第1次政権時に北朝鮮の核放棄を目指した外交が象徴的だ。史上初の米朝首脳会談の実現で長年の不信が解消され、非核化が進展すると世界は期待した。

 しかし、ふたを開ける...

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