教員にとって大切なのは、授業に専念できる環境があることだ。ひいては子どもたちの学びを深め、健やかな成長を支える。教員の長時間労働を是正し、ゆとりある学校現場を実現したい。
経済協力開発機構(OECD)が2024年に実施した調査で、日本の教員の仕事時間が、小中学校ともに世界最長であることが明らかになった。
1週間当たりの仕事時間は小学校52・1時間、中学校55・1時間だった。前回18年調査よりは減少したものの、国際平均に比べて小学校は11・7時間、中学校は14・1時間、長かった。
調査は4回目で、日本は調査に参加してから毎回、仕事時間が世界最長だ。ゆとりのない働き方がまん延している状態を、一刻も早く改善したい。
仕事内容にも課題がある。労働時間は長くても、本来業務であるはずの授業時間が短いからだ。小学校の23・2時間、中学校の17・8時間は、どちらも国際平均に届いていない。
一方で、学校運営や事務の業務が長い。教育委員会から求められるアンケートといった事務仕事に時間を割かれ、授業の時間が少ないのでは本末転倒だ。
調査では教員の6割以上が「事務業務が多すぎること」にストレスを感じていることも分かった。負担軽減が欠かせない。
「教えることの面白さややりがいに満足している」と答えた教員が、小学校で89・5%、中学校で91・8%と、国際平均を上回ったことに注目したい。「熱意を持って教えている」という回答も、9割を超えている。
しかし「自分の成果に満足している」とした教員は半数程度で、平均を大きく下回った。教員が知識やスキルを身につける時間を確保する必要があるだろう。
長時間労働のイメージからか、教員の志望者は増えていない。
都道府県や政令指定都市の教育委員会が23年度に実施した公立学校の教員採用試験の倍率は、小学校2・2倍、中学校4・0倍で、過去最低となっている。
教員が不足すれば長時間労働につながり、それによって病欠者が出て、休職者の穴埋めのためにまた教員が不足するという悪循環は断ち切らねばならない。
教員給与特別措置法(給特法)などの改正で、教委は26年度から、教員の業務量管理や健康確保の計画策定などが義務となる。
働き方改革の促進に、文部科学省は、部活動の地域展開や徴収金の徴収・管理など、学校以外が担うべき業務を示している。
1カ月45時間という国が設定する残業時間の上限を超えて働く教員をなくすには、支援スタッフの配置など手厚い対策が要る。
国の礎である教育を充実するために急ぎ環境を整えたい。