上智大准教授の中村江里さん
 上智大准教授の中村江里さん

 戦後の日本社会で長らく不可視化された元兵士の戦争トラウマへの関心が高まっている。元兵士の子どもたちが声を上げるようになったのが大きい。戦争は国と国の関係における終結はあるが、一人一人の精神的な被害は戦後も続き、次の世代にも影響を与えている。先の戦争は決して人ごとではない。

 戦争トラウマ反応で代表的なのは心的外傷後ストレス症(PTSD)だ。戦地で命の危険にさらされたり、戦友の死を見たり、加害行為をしたりするといった、衝撃的な体験により引き起こされる。苦しい記憶がよみがえったり、悪夢を繰り返し見たりする。米国ではベトナム戦争帰還兵のPTSDが社会問題化した。

 約20年前から戦争トラウマを研究し、...

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