科学・政策と社会研究室代表理事の榎木英介氏
 科学・政策と社会研究室代表理事の榎木英介氏

 今年のノーベル賞受賞者が発表され、自然科学分野では日本から2人の受賞者が出るなど、久しぶりに明るいニュースをもたらした。

 ノーベル賞は単なる栄誉の象徴ではなく、時代の姿を映す鏡でもある。今回の受賞は30年ほど前の日本が誇った「研究の黄金期」と、移民国家の米国が持つ「開かれた知の力」の双方を浮かび上がらせたと言える。

 生理学・医学賞では坂口志文大阪大特任教授、化学賞では北川進京都大特別教授の受賞が決まった。2人は京大で同時期に学生時代を送り、関西の公立高校出身という共通点を持つ。

 だが、彼らの母校、京大の対応は対照的だった。現職副学長である北川氏は大学ホームページで大きく取り上げられた一方、大...

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