「政治とカネ」の問題に最優先で取り組まなくては、政治に対する国民の信頼回復は望めない。禍根を残さないように、妥協せず、協議を深める必要がある。

 自民党と日本維新の会が、連立政権樹立を念頭にした政策協議を進めている。

 公明党が連立政権を離脱し、首相指名に向けた戦略の練り直しを迫られた自民の高市早苗総裁が、維新に連立を打診した。第一候補だった国民民主党が慎重姿勢を崩さなかったことが大きい。

 自民と維新は連立政権樹立に向けた協議が「大きく前進した」とし、維新は17日、立憲民主、国民民主両党に首相指名選挙を巡る連携の打ち切りを伝えた。

 衆院は自民、維新の両会派で計231議席となり、過半数の233に近づく。高市氏が21日の首相指名選挙で首相に選出される見通しは強まったといえるだろう。

 維新は、12項目の政策要求を提示して協議に臨み、憲法改正や外交・安全保障といった基本政策については早々に一致した。

 注目されるのは「企業・団体献金」の扱いだ。

 自民と連立を組んでいた公明は、献金の受け皿を党本部と都道府県連に絞る内容の規制強化案を求めたが、自民は消極的だった。

 維新は、企業・団体献金の禁止を主張しており、自民との隔たりは公明の案よりさらに大きい。折り合うのは容易ではない。

 この問題をうやむやにしたまま連立政権樹立に突き進めば、企業・団体献金に厳しい姿勢を示してきた維新は説明がつかなくなる。政治への信頼回復がさらに遠のくと指摘せざるを得ない。

 政策協議で維新は、「副首都」構想と社会保障改革を2本柱に位置付け、実現を要求している。

 政治改革として国会議員定数の1割削減も求めている。吉村洋文代表は年内の削減を明記する形で合意できなければ連立を組まないとし、連立の絶対条件に掲げている。比例代表の定数減が念頭にあると示唆している。

 強固な支持基盤を持つ地元の大阪で、議員定数削減をはじめ「身を切る改革」を実行してきた維新には自負があるのだろう。

 自民は定数削減を受け入れる方向だが、有権者と密接に関わる選挙制度は国会での丁寧な議論が欠かせず、2党で協議を先行させることには違和感がある。

 喫緊の課題である企業・団体献金の問題を差し置いて、定数削減を急ぐのも順序が違う。

 党の政策実現を急ぐ維新と、与党の座を死守したい自民が、国民を置き去りにした協議を進めているように思えてならない。

 維新が求める食料品の消費税率0%への引き下げも両党に隔たりがある。物価高対策や政治とカネといった国民が注視する政策にこそ、明確な道筋を示すべきだ。