2年前、野球の世界大会WBCの決勝前に大谷翔平選手が発した言葉は流行語になった。「憧れるのをやめましょう」。アメリカのスター選手に憧れているうちは勝てないとチームを鼓舞した
▼大前提にメジャーリーグへの敬意がある。その心酔する最高峰の舞台で今、力と力の真剣勝負に挑戦できる本能的な喜びが、現実離れした活躍の原動力なのだろう
▼憧れを種とし、努力の末に大輪を咲かせた県人に元気をもらった。フィギュアスケート女子のグランプリシリーズ開幕戦を、新潟市出身で初参戦の17歳中井亜美選手が制した
▼浅田真央さんにひかれ、5歳でスケートを始めた。憧憬(しょうけい)を覚悟に変えて中学から千葉に拠点を移し、今季いよいよシニアクラスに転向した。浅田さんが大切にし続けたトリプルアクセルに磨きをかけ、来年の五輪も視野に入った
▼中井選手が快挙を達成したその日、高校野球の帝京長岡と日本文理が北信越大会の決勝進出を決めた。ダブルで来春のセンバツ甲子園出場をほぼ手中にした。それぞれが星稜、敦賀気比という屈指の強豪校を破った文句なしの快進撃だ。帝京長岡が勝った決勝も終盤の攻防は見応えがあった
▼両校ともベンチ入りメンバーに多くの県外出身者がいる。目指す甲子園に近づくため、親元を離れてきたのだろう。一度きりの高校生活を新潟で過ごすと決断し、雪国に飛び込んできた。そして、憧れを力に自己実現を果たそうとしている。胸を張って本県代表として大舞台に挑んでほしい。













