
サイパンで戦死した父の遺影を持つ稲田定彦さん=静岡県浜松市(2025年8月2日撮影)
青く透き通った海から吹く潮風がヤシの木々を揺らす。日本から空路で3時間半。赤くさびて朽ち果てた旧日本軍の戦車や大砲が80年の歳月を物語る。米領サイパン島は太平洋戦争で、旧日本軍と米軍が死闘を繰り広げた。日本側の死者は兵士と民間人を合わせておよそ5万5300人に上り、今も海域を含めて2万6千柱超の遺骨が眠る。(敬称略、文・久江雅彦、写真・堀誠)
サイパン南部の密林の岩陰。日本の遺骨収集団が熊手を手にゆっくりと地面を掘っていく。80年の歳月を経た人骨はもろく、慎重に土を取り除かないと砕けてしまう。2025年夏、一般社団法人「日本戦没者遺骨収集推進協会」の主催で、日本人10人が現地に赴いた。浜松市...
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