名古屋市で1999年に主婦があやめられ、一家3人の幸せが奪われた事件は、26年を経て容疑者が逮捕された。真相究明を諦めなかった夫らの執念がなければ、捜査に進展はなかったかもしれない
▼事件解決への手がかりを残すため、夫は住むこともない現場のアパートを借り続けた。払った家賃は2200万円を超える。時効撤廃を実現させた運動にも加わった。街頭で情報提供を求める地道なチラシ配りもした
▼望みを捨てずに行動を続けた粘りは、種火となる。昨年になり「私が捕まえます。絶対犯人に当たる」と言い切った捜査員らの迫力が、容疑者を追い詰めた。家族の無念に突き動かされたものだろう
▼目を見張る捜査の展開は、膠着(こうちゃく)するさまざまな未解決事件にも希望を抱かせる。同時に、それぞれの解決に向け力を尽くすべき立場の人々を奮い立たせ、職務遂行への覚悟を迫ることにもつながったと思いたい
▼ずっと動かなかったものが動き、闇に光が差す。どれほど願い続けてきたか。どれだけ声を枯らしたか。13歳だった横田めぐみさんが北朝鮮に拉致された事件は、発生から48年が過ぎた。名古屋の事件のさらに倍近い歳月が流れたが、めぐみさんを家族の元に取り戻すという誓いは揺るがない
▼新潟市中央区ではきょう、「忘れるな拉致 県民集会」が開催される。救出の旗を掲げ続ける。諦めない。家族らだけに使命を負わせない。拉致現場になった新潟の地に生きる私たちが、あらためて心を合わせる日である。
