コンビニの100円コーヒー、ビール、缶詰、納豆…。値上げのニュースが流れない日がない。安価でありさえすればいいとも思わないが、日々息苦しさが増す

▼日銀の黒田東彦総裁は「家計の値上げ許容度も高まってきている」とした発言を陳謝、撤回に追い込まれた。許容ではなく諦めであり、生活者の目線を欠いていると批判を浴びた

▼参院選を控えて野党は「岸田インフレ」だと政権批判を強めるが、一方で「プーチンインフレ」だとの反論もある。ロシアのウクライナ侵攻が招いた資源の高騰も大きく関係しているためだ

▼賃金や年金の上昇とリンクしない値上げは受け入れがたい。ただ、目を覆いたくなる戦争犯罪もあらわになるウクライナの惨状を前に、何かできることはないかと考えるとき、ロシアへの経済制裁などに起因する値上げは少し別ものに見える。戦争終結へ必要な痛みの分配だと考えれば受け止め方は変化する

▼日本に暮らしていて、直ちに戦地に駆り出されることはない。家族や知人が砲弾から逃げ惑うことになるわけでもない。その上で、かの地の紛争は自分とは一切関係ないと決め込むことができないとすれば、日常が成り立つ範囲での負担増はやむを得ない部分もあるのではないか

▼ここに至る金融政策に甘んずることはできないし、政治の無策は断固願い下げだが、現実として値上げに踏み切る企業も背に腹は代えられないだろう。避けられない値上げなら、せめて戦地の人々に心を寄せてしのぎたい。

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