夕日が海に沈む間際、輪郭が緑色に輝いて見えることがある。グリーンフラッシュとか緑閃光(りょくせんこう)と呼ばれる現象だ。太陽の光が大気中を通過する際にゆがめられ、緑色の成分だけが届くことで起きる。光が織りなす天然の芸術である
▼光を観(み)ると書いて「観光」。語源は中国の四書五経の一つ「易経」の一文「観国之光 利用賓于王」(国の光を観る もって王に賓たるに利(よ)ろし)とされる。〈国の文化や政治など威勢光輝をよく観察し、君主から賓客の扱いを受けて国事に力を入れるのがよい〉といった意味らしい
▼易経は土地の持ち味を光と表現したようだ。現代では、魅力をとくと味わうことが観光ということになる。世界経済フォーラムが発表した2021年版の旅行・観光開発ランキングで、日本が初めて世界1位になった
▼観光地として人気の欧米勢を上回った。交通インフラの充実や独自の文化的資源が評価されたという。新型ウイルス禍で大打撃を受けた日本の観光業界にすれば、心強い追い風になるだろう
▼政府は外国人観光客の受け入れを限定的に再開した。県内での本格的な受け入れはもう少し先になるかもしれないが、感染対策に万全を期しつつ準備を進めねば
▼夕日はオレンジ色だとばかり思っていたが、緑の光を放ったり、空や海を赤紫のグラデーションに染めたりする。実は多様な色彩が楽しめる。新潟の地も、さまざまな色の光で彩られているはずだ。足元の魅力を見つめ直し、いずれ多くの人をもてなしたい。