県政トップが信じ難いセクハラを、長期にわたって重ねていたことに憤りを覚える。辞職したことを考慮しても責任は重大だ。

 福井県庁の体質にも問題があっただろう。事案を他山の石として、ハラスメントを許さない社会づくりを急ぎたい。

 福井県の依頼を受けた弁護士3人の特別調査委員が、セクハラを認め辞職した杉本達治前知事に関する調査報告書を公表した。

 それによると、杉本氏は複数の女性職員に対し、性的関係を求めるメッセージをLINE(ライン)や私用メールで約千通送信したほか、体を触る身体的接触などをしたと認定された。

 ストーカー規制法や不同意わいせつ罪に抵触する可能性も否定できないと指摘した。

 杉本氏はこれまで「雑談の延長」「軽い冗談」などと釈明していたが、公表された内容はあまりにひどい。冗談と受け取れるものではないことは明らかだ。

 中には「一切内緒で、墓場まで持っていって」との文面もあった。意図的だと言えるだろう。

 セクハラが、杉本氏が総務省からの出向で県総務部長を務めた後、内閣参事官となった2007年から昨年まで20年近く続いていたことにも驚きを禁じ得ない。

 被害を受けた職員は「気に入る対応をしなければ仕事ができなくなる恐怖心があった」という。

 絶対的な権力を持つ知事の機嫌を損なえば仕事を失うと悩み、女性として屈辱感を味わった被害者の苦痛を思うと胸が痛む。

 通報した職員は、杉本氏の行為に常習性を感じ、放置すればさらに被害が広がると思ったという。勇気ある行動に敬意を払いたい。

 見過ごせないのは、セクハラを長期化させた背景に県庁の組織風土があるとみられることだ。

 報告書によると、ある職員は被害直後に上司に相談したが、上司は「同じようなメッセージが来たらすぐに言ってほしい」とするだけで、ハラスメント事案を所管する部署に情報共有しなかった。

 事を穏便に収めようとしたのではないか。問題意識の希薄さや対応の不適切さがうかがえる。

 問題は福井県に限らない。首長のハラスメントは沖縄県南城市をはじめ全国で相次ぎ、民間でもトップによる加害が後を絶たない。

 ハラスメントを許さない風土をつくるには、トップらを含めて研修を徹底することが重要だ。

 組織内に複数の相談員を配置し、末端の職員まで周知するなど、相談体制を整える必要もある。

 福井県の問題を受け、女性の人権問題に詳しい弁護士は「しかるべき立場にありながら同様の行為を漫然と行っている男性は少なくない」と指摘している。

 セクハラやパワハラは深刻な人権侵害である。そのことを社会全体で改めて認識し、共有したい。