政治の停滞を招くのは明らかである。国民生活を顧みた判断とは言えまい。

 内政、外交における不都合を覆い隠そうとする政権の身勝手な戦略が透ける。目指す解散の大義が見えない。

 高市早苗首相が、23日召集の通常国会冒頭で衆院を解散する意向を自民党関係者に伝えた。首相は候補者擁立作業を急ぐよう一部の自民幹部に指示した。

 政権基盤を強化する必要があると判断したとみられる。自民と日本維新の会の連立政権は、衆院で過半数ぎりぎりで政権運営の不安定さは拭えない。

 昨年10月の高市内閣発足以来、報道各社の世論調査で内閣支持率が軒並み高い水準を維持している事情も首相の判断を後押ししたとみられる。

 23日解散の場合、衆院選は「1月27日公示、2月8日投開票」「2月3日公示、15日投開票」の日程が想定される。

 懸念するのは、解散に伴う政治空白である。

 冒頭解散となれば2026年度予算案の審議は遅れ、3月末までの成立は困難な情勢となる。

 国民生活を圧迫する物価高に対処する予算案であるはずだ。国会審議が遅れれば、中間層に恩恵があるよう国民民主党と自民で合意していた「年収の壁」引き上げも見通せなくなる。

 物価高対策をはじめ「経済最優先」を訴えてきた首相自身の発言と矛盾するものだ。

 昨年夏の参院選で自民が大敗した後に政治が停滞した経緯を踏まえ、高市首相は政策実現のスピードを重視してきたはずである。

 社会保障と税の一体改革を野党も含め議論する「国民会議」を今月中に設置し、「スピード感を持って検討を進めたい」としていた。だが解散すれば停滞は必至だ。

 選挙制度に関する与野党協議会も同じである。野党は不信感を募らせるばかりだろう。

 国会論戦で批判され支持率が下がる前に、とのもくろみから冒頭解散するのではないか。

 首相は「政治とカネ」問題の解決に後ろ向きだと批判されている。企業・団体献金の規制強化を軽んじるような姿勢は国会での追及を免れない。

 連立を組む維新は、所属する地方議員が国民健康保険料の支払いを逃れていた問題が浮上している。こうした疑念に対し、国会の場で説明責任を果たしてこそ政権与党である。

 横たわるのは内政の課題だけではない。首相は、台湾有事を巡る発言から中国の反発を招いた。経済的威圧を強める中国との緊張緩和の糸口を探るべきである。

 内外の課題に対処するために必要なのは、性急な解散より与野党の論戦だ。党利党略にとらわれている場合ではない。