平年より3日遅れの梅雨入りだった。「季節の移ろいはまあ普通か。土砂降りだけは勘弁」。畑のトマトやナスたちは、こんな調子で少し安心しているだろうか。朝刊で日の出の時刻を見る。とうに午前4時半を切っている。21日には夏至が迫る
▼北半球は1年で一番昼が長い日だ。それを過ぎれば、真夏を前に日は短くなっていく。当たり前のことに感じ入るのは、加齢のせいか。小学生の時、夏至を「げし」と読めず、国語辞典に八つ当たりしたことを思い出す
▼「夏至」と同じくらい読みにくい熟語に「五月雨」がある。何冊か辞書をめくる。 「さみだれ」 「さつきあめ」で出てくる。それなのに「ごがつあめ」と引いても辞書は知らん顔だ。語感は風流で、みやびなくせに意地悪な言葉だ
▼意味もややこしい。5月に降る雨と答えるとバツ。陰暦の5月に降る雨だから、ほぼ6月の雨。夏の季語だ。夏至を挟んだ梅雨と同じである。降ったりやんだりの空模様だ。一度で終わらずだらだらと続く。そこで「五月雨式」という言葉が生まれた
▼いまの値上げラッシュに通じる表現だ。少し前はコンビニなどの「ステルス値上げ」が消費者を惑わせた。レーダーに映らない戦闘機に例え、値段は同じでも中身を減らしたり、弁当を底上げしたりの隠し技だ
▼穀物や油、原材料価格などにウクライナでの戦火の影響が大きく現れるのは、秋以降ともいう。 「どさくさ」 「便乗」は論外だ。同じ値上げなら、賃上げだって五月雨式があっていい。