犠牲者が増え続けている現状を憂慮する。市民への弾圧は許されない。対話により早期に混乱の収束を図るべきだ。

 イラン全土に広がる反政府デモ着用強制に反対する全国的なデモが起きた2022年以来の規模とされる。

 イラン指導部は、潜り込んだテロリストが治安部隊の要員やデモ参加者を殺害したと説明する。だが、デモの参加者は、治安部隊が実弾を発砲したと証言している。

 国が国民に銃を向け、命を奪ったとすれば暴挙である。直ちに武力行使をやめねばならない。

 デモは昨年末、経済危機への抗議として始まった。核問題を巡って米国や欧州の制裁を受けるイランでは、通貨が対米ドルで下落を続け、高インフレが国民生活を圧迫していることが背景にある。

 イスラム革命前の王制下の皇太子で米国に亡命中のレザ・パーレビ氏の呼びかけで、デモは拡大したとされる。各地に波及する中で、過去の抗議活動を抑え付けてきた当局や最高指導者ハメネイ師への不満が表出した。

 これに対し当局は、デモの背後に米国とイスラエルがいるとして、強硬手段で鎮圧する構えを取っている。こうした姿勢は新たな制裁を招き、イラン経済をより悪化させかねない。

 すでに英仏独3カ国の首脳は、デモ参加者の殺害を非難する声明を発表した。国連のグテレス事務総長も「最大限に自制し、過剰な武力行使を控える」ことを求める声明を出した。

 イランは国際世論と国民の声に耳を傾け、政情の安定と経済の再建を図る必要がある。

 注視しなければならないのが米国の動きだ。

 トランプ米大統領は、イランと貿易する第三国に対し、米国との取引に25%の関税を課すと表明した。経済的な制裁にとどまらず、「イランがデモ参加者を殺害すれば、米国は救出に乗り出す」などと軍事介入も示唆し続けている。

 イランも米軍の攻撃を受けた場合は報復すると予告している。報復合戦を避けるには、互いの外交努力が欠かせない。

 トランプ氏の発言には、11月の中間選挙を見据えて外交成果を挙げたいとの狙いがあるとも指摘されるが、いま考えるべきはイラン国民の安全と自由だ。大国としてイランへ適切に働きかけることが求められる。