NHKで放映中のドラマ「テミスの不確かな法廷」では、発達障害のある裁判官役を松山ケンイチさんが好演している。出演者もスタッフも障害に対する理解を深めて撮影に臨んだという。毎回引き込まれる。事件の設定も怠りなく見える
▼佳境を迎えたドラマでは、25年前の一家4人殺害事件の再審請求が描かれる。既に元被告が極刑に処された「死後再審」である。執拗(しつよう)な取り調べで自白を迫る場面や、裁判所に提出を求められた証拠品を検察側が故意に開示しない場面があった
▼ドラマか現実か見分けが付かなくなる。42年前に滋賀県日野町で起きた強盗殺人事件は再審開始が決まった。無期懲役が確定した後に病死した阪原弘さんは、裁判のやり直しで無罪となる公算が大きい
▼最初の再審決定から7年半を要した。検察側が2度にわたり不服を申し立てたためだ。裁判所は暴行脅迫で自白を強要された疑いや、殺害手法の鑑定結果との不整合を指摘していた
▼そもそも有罪確定前の一審が自白の信用性を否定し、二審は「疑問は残る」とした。阪原さん存命中の再審請求審は「自白は客観的事実と矛盾がある」としながら「記憶違いと理解できる」と結論づけていた。ずさんすぎないか
▼再審制度の見直し議論が進むが、三審制で審理を尽くした確定判決の法的安定性を重視すべきと、法務省は慎重姿勢だった。検察の不服申し立て権限を維持するなど大胆な修正は見送る流れにある。「審理を尽くした確定判決」が聞いてあきれる。
