ただちに法制化しなければならない理由が見いだせない。憲法で保障された内心の自由や表現の自由を脅かしかねず、立法の必要性から考えるべきだ。
自民党は日本国旗損壊罪に関するプロジェクトチームの会合で、法案の骨子案を大筋で了承した。今国会での成立を目指す。
骨子案では国旗を「公然と損壊、除去または汚損する行為」を処罰対象とする。損壊している状況をライブ配信したり、動画を交流サイトなどに配信、投稿したりする行為も含まれる。
損壊した場合に処罰対象となるのは、布や紙で作られ、さおなどに掲げられる国旗で、お子さまランチの旗は含まれない。罰則として2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金を科す。
アニメ、漫画、ゲーム、生成人工知能(AI)などによる創作物は対象外だ。
「国旗を大切に思う国民感情の保護」を掲げた国旗損壊罪は高市早苗首相が2012年に議員立法を提出するなど、長年こだわってきた政策課題の一つだ。支持基盤の保守層へのアピールにもなる。
昨年、日本維新の会と結んだ連立政権合意書に盛り込み、優先的なテーマに浮上させた。
ただ、自民内部の議論でも「過剰規制」「国民の萎縮」といった慎重論が上がっていた。
異論を受け、「個人の内心に立ち入ることは想定せず、国旗尊重義務は設けない」と骨子案に明記したほか、犯罪の構成要件の厳格化にも力点を置いた。
だが、何のために法制化しなければならないのか、十分な議論がなされたとは言い難い。
立法目的として推進派は刑法に外国国章損壊罪があるが、日本国旗に同様の規定がないことを挙げる。しかし、外国国章損壊罪は円滑な外交を目的としており、日本国旗とは趣旨が異なる。
被害者がいるのに現行法で対処できないなら必要性もあるが、現在、刑罰をもって抑止しなければならないほど日本国旗の損壊被害が起きているとは言えない。
また、法案骨子は「著しく不快の情を催させる方法」で国旗を損壊する行為を処罰の対象としているが、何を不快と感じるかは人によって異なる。
損壊の意図や目的といった主観的な要素ではなく、客観的な行為の状況によって判断するというが、恣意(しい)的な運用がなされないか、懸念は消えない。
仮に法律が制定された場合、反対派がパフォーマンスで国旗を損壊することが考えられるほか、ささいな事案による通報が増えるなど、混乱が起きかねない。
法案が国会に提出されれば、野党の対応が焦点となる。憲法で保障された国民の権利を制限しかねない法律だ。必要性を含め、徹底的な議論が求められる。
