民間人の犠牲や世界経済への打撃は深刻の度を増している。泥沼化を避けるため、当事国による協議を早期に実現させたい。

 米国とイスラエルがイランを攻撃してから28日で1カ月となる。イランはイスラエルやペルシャ湾岸諸国の米軍基地などに報復し、原油輸送の要衝であるホルムズ海峡を事実上封鎖した。

 イランでは最高指導者ハメネイ師ら幹部が次々に殺害され、子どもの犠牲者も出ている。後継者のモジタバ師は徹底抗戦を訴えており、態度軟化は見通せない。

 米イスラエルが反米路線からの体制転換を追求すれば、長期戦の恐れもある。戦闘のさらなる激化を憂慮せざるを得ない。

 米紙はトランプ政権がイランに対し、交戦終結に向けて15項目の計画を提示したと報じた。核施設の解体やウラン濃縮活動の停止、ホルムズ海峡の開放などという。

 イラン国営放送局は、イランが米国の要求に対し、逆に条件として攻撃・暗殺の完全停止や賠償金の支払いなど5項目を提示したと報道した。

 双方とも相手の条件を全て受け入れるのは困難とみられるが、米国が近く交戦終結に向けた会合を開催する方向で調整するとの米報道もある。条件の提示が停戦への糸口となるよう期待したい。

 中東の仲介国だったカタールやオマーンがイランの攻撃を受けて役割を果たせない中、急浮上したのがパキスタンだ。イランと友好関係を保つ一方、米国との結び付きも強めてきた。その立ち位置を仲介外交に生かしてほしい。

 国連人権理事会は中東情勢を巡る会合を開き、イランによる近隣諸国への攻撃を非難する決議案を採択した。

 会合は湾岸諸国などの要請で開かれ、決議は米国などによる攻撃に触れていないが、ターク人権高等弁務官は全ての当事者に国際法の順守を要請した。戦争を止める覚悟が国際社会に問われている。

 気がかりなのは、米国が戦力の増強を続けていることである。

 米メディアによると、陸軍部隊が新たに派遣を命じられた。ホルムズ海峡の航行を確保したり、イランの島々などを掌握したりする作戦に投入される可能性がある。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、イランの兵器産業を可能な限り破壊するよう命じたという。

 攻撃の強化をちらつかせては、イランの警戒感を高め、協議の実現が遠ざかる。自制を求めたい。

 中東情勢の緊迫化による日本への悪影響が顕在化している。

 ホルムズ海峡経由で到着するタンカーは激減し、ガソリンやナフサなどが調達難に陥っている。

 政府は26日、石油の国家備蓄の放出を始めた。民間備蓄と合わせると、国内消費の45日分となる。

 供給不安を緩和するには、調達先の多角化を急がねばならない。