「銀行は晴れた日に傘を貸して雨の日に取り上げる」。反論もあろうが銀行融資の一端を表してもいるのだろう。2013年に放映され大ヒットしたテレビドラマ「半沢直樹」に出てくるせりふである

▼有料配信サイトで見直して、改めてよくできたドラマだと感心する。私利私欲から銀行の正当な業務をゆがめる上司に対し、主人公役の俳優堺雅人さんが決め顔とともに「やられたらやり返す、倍返しだ」と叫ぶ場面には、毎回すかっとさせられる

▼「倍返し」は、同年の「新語・流行語大賞」で年間大賞に選ばれた。スポーツの世界でもニュアンスはやや異なるものの、近い言い方がある。冬季五輪で苦杯をなめた選手が「五輪での借りは五輪でしか返せない」と語っていたことを思い出す

▼サッカーや野球で移籍した選手が、古巣のチーム相手にゴールを決めたり、本塁打を打ったりすると「恩返し弾」と呼ぶ。こんな「お返し」なら、すがすがしさを感じる

▼ところが、米国とイスラエルによるイランへの武力攻撃となると話は別だ。トランプ米大統領は当初、イランがホルムズ海峡の原油輸送を妨害すれば「20倍」の力で報復するとSNSで警告した。ホルムズ海峡を巡ってはイランと米国で封鎖の応酬も繰り広げられている

▼武力衝突が起きると、報復が報復を呼ぶ負の連鎖に陥りやすい。戦闘終結に向けた米国とイランの協議が、近く再開されるのか。「やられたらやり返す」は、ドラマかスポーツの世界にとどめてもらいたい。