新潟大の園田浩司准教授(41)は昨年5月、新潟市で開かれた「新潟水俣病の歴史と教訓を伝えるつどい」に出席した。水俣病について誰がどんな解決を目指しているのか知りたかった

▼知事や環境相、県会議長らのあいさつを書き留めていて、ふと気が付いた。彼らが皆「高度経済成長」という言葉を使い、「豊かな経済発展を目指す中で発生した公害」などと話したことだ。登壇した被害者のメッセージにはない言葉だった

▼高度経済成長下で起きたことだから仕方ない、被害者がいてもやむを得ない、ということなのか-。自分なりに解釈した時、「寒気」を覚えた

▼園田さんの専門は文化人類学で、カメルーンの狩猟採集民社会を研究してきた。新潟大に赴任して畑違いの新潟水俣病の授業を担当し、まだ4年しかたっていない

▼今年3月には自身と学生の考えをまとめた冊子「これからどしたいっ!!」の第2号を発行した。水俣病問題は専門家に任せようという考えが被害の実態を社会から見えなくしている原因の一つではないか、と考えたからである。つどいのエピソードも書いた。「これまで水俣病に関わりのなかった人に読んで、考えてほしい」と力をこめる

▼今年で熊本の水俣病は公式確認から70年、新潟水俣病は61年がそれぞれ経過する。患者として認めるよう求める裁判は続き、根本的な治療法は見つかっていない。解決への道筋は見通せないが、わがこととして捉えようとする研究者と学生がいる。少しだけほっとする。