新潟、山形、福島にまたがる飯豊連峰は岳人憧れの山域だ。尾根筋にたどり着くまで、たっぷり4~5時間はきつい登りが続く。汗を絞られ、体力を削られる。それが飯豊の醍醐(だいご)味(み)かもしれない

▼よそには有料で肉料理や生ビールを楽しめる山小屋もある中、飯豊のほとんどの小屋は自炊になる。ただでさえかさばる荷物に食料や寝具が加わる。重い飲み水を積んだザックのひもが肩に容赦なく食い込む

▼疲れを癒やしてくれるのは、稜線(りょうせん)に咲き乱れるかれんな草花たちだ。鮮やかな青色のイイデリンドウをはじめヒメサユリやニッコウキスゲ、シラネアオイ。「花の飯豊」と愛されるゆえんだろう

▼飯豊連峰に入山する胎内市の足ノ松尾根登山道が今季は閉鎖されることになった。昨年遭難した登山者が、クマに襲われた可能性が高いのだという。痛ましい事故には言葉もないが、山開きを控え関係者も苦渋の決定だっただろう。今後の再開は見通せない

▼足ノ松尾根の名前の由来を地元の登山家に聞いた。獲物を狙って銃を構えた猟師が、松の根を足場にしていたからだという。新潟側から入山する絶好のコースだけに、飯豊を目指す人が減らないか心配だ

▼昨年から全国で続くクマ目撃や人身被害は、今年も止まらない。他県をみると、山だけでなく、まちなかも安全域とは言えなくなった。大型連休中は県内各地から山開きの便りが届くだろう。もしクマに出合ったらどう身を守るのか。一人一人が考えなければならない時代になった。