「シェリー」や「とんぼ」などの代表曲を収めた長渕剛さんのアルバム「昭和」は、昭和が平成に変わって間もなくリリースされた。自らの歩みを重ねつつ、一つの時代の終焉(しゅうえん)を表現したといわれる

▼タイトル曲の「昭和」では〈傷つけば傷つくほど優しくなれた〉〈悲しめば悲しむほど思いやれた〉と、戦後の国民感情を隠喩するように歌う。一方で真夜中の湾岸道路をとばし車載電話をかける情景を通し、物質的な発展を謳歌(おうか)する社会を象徴的に描いた

▼光と影のコントラストが激しく鮮明だった昭和が終わり、既に37年が過ぎた。遠くになりにけりである。きょう「昭和の日」は「激動の日々を経て復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす日」として祝日に定められた

▼明治や大正、平成にはない別格の扱いだといえる。ひとえにそれは「激動の日々」をもたらし、この国の形を変えた戦争への深い悔悟を忘れないためだろう

▼暮らしは貧しくても、きょうより明日は良くなると夢を描けた戦後は、古き良き時代でもあった。郷愁をかき立てられる。それでも、敗戦から続くあの歩みを二度と繰り返すまい

▼好青年然としてフォークソングを歌っていた長渕さんは、いつしかヤクザ役がはまるこわもての印象を強め、やがて筋骨隆々とした強さを追求し始める。昭和から令和へ風貌は随分変わり今年70歳になるが、現役で歌い続ける。アルバム「昭和」には決して変わらないと繰り返す楽曲もある。その心を考えてみる。