哺乳動物の生態に詳しく、「ひげ先生」の愛称で親しまれた糸魚川市の野紫木(やしき)洋さんをしのぶ企画展が、同市内で開かれている。展示品の中には自然観察の際に愛用した登山靴やリュックサックなどが並び、山歩きに同行した日々がよみがえってくる

▼昨年夏、92歳で亡くなるまで、「青海少年の家」を拠点に希少動物ホンドオコジョの研究にいそしむ傍ら、小中学生向けの自然観察会を続けた。新緑や若葉がまぶしい季節になると、身近な草花や昆虫の採集に熱中する親子連れが多く参加した

▼糸魚川に移住して30年の節目に、日ごろの思いを本紙上越面に語ってもらったことがある。手つかずの自然が残されている当地の魅力を紹介しつつ、野生動物による人身や農作物への被害が全国的に相次ぐなど、人と動物とのトラブルが増えている状況を憂いていた

▼山の恵みで衣食住を賄い、山に生かされていた人々の営みが変化している。互いの関係が疎遠になり、森林が荒れて野生動物が里に下りてくる。そんな指摘は時に熱を帯びた

▼企画展に合わせた思い出を語る会には、京都育ちの穏やかな口調の野紫木さんに薫陶を受けた自然愛好家らが集った。「周りの植物を傷めてはいけない」「森に暮らす動物を驚かさないようにしよう」。野山に入り生き物をめでる精神は、県内外の教え子たちに受け継がれている

▼きょうは「みどりの日」。深緑がしたたる故郷を、しっかり次代につなぎたい。企画展の遺品がひげ先生の情熱を伝えている。