ウツボカズラという植物がある。原産はアジアの熱帯地域で観賞用としても人気がある。特徴は何と言っても、葉がつぼのように変形した補虫袋だ
▼この袋は虫が滑り落ちやすい構造になっていて、一度はまると抜け出るのは難しい。やがては消化液に溶かされてしまうという寸法だ。閉じ込められて命が刻一刻と削られていく。自分が虫の立場だったらと考えるとどうにも切ない
▼そんなことを思い浮かべたのも先日のこんな報道に触れたからだ。大阪で2歳の女児が自宅室内に長時間放置され熱中症で死亡した。四方を板張りにしたベビーサークルに閉じ込められ、自力で脱出できない状況だった
▼当時外出していて保護責任者遺棄容疑で逮捕された祖母はエアコンと扇風機をつけていたと説明したが、水や食べ物は用意されていなかった。当日の気温は35度近くに達した。閉じ込められた環境で一人、命を落とした女児を思うと胸の奥が締め付けられる
▼熱暑の中で命を落とす事故や事件が後を絶たない。県内でも車に取り残された子どもが亡くなる事故があった。条件によっては外気温が20度程度でも車内が50度近くになることがあるという。エアコンをつけていても何かの弾みで停止するかもしれない
▼梅雨入り前のこと。スーパーの駐車場の車内で小型犬が鳴いていた。曇り空で、その時点では室温もそう高くはなさそうだったが、子どもが亡くなる事故に重ね合わせた。店内放送を頼むなど注意を促せなかったか。後悔している。
