看板政策の実現に利用しようとする動きばかりが目に付く。本来の目的を見失うことなく、議論しなければならない。
自民党と日本維新の会が「副首都」構想の具体化に向けた法案を衆院に提出した。両党は今国会での成立を目指す。
法案によると、人口や経済規模など、一定の要件を満たす道府県の申し出を受けて、首相が副首都を指定する。
副首都の目的は大規模災害時の首都機能代替や経済成長のけん引とした。首相を本部長とする推進本部を設置し、副本部長として担当相ポストを設ける。法施行から1年以内に基本方針を策定する。
首都直下地震は高確率で発生が予想されている。官公庁が集中する首都の機能が損なわれれば、広範囲に甚大な影響が及ぶ。機能の代替策は喫緊の課題だ。議論を深めてもらいたい。
問題は、維新が副首都構想に乗じ、大阪市を廃止して特別区へと再編する「大阪都構想」を実現しようとする思惑が透けることだ。
法案の付則には当初、大阪都構想の賛否を問う住民投票を大阪府全域で実施可能とする内容が盛り込まれていた。
都構想は過去2回、大阪市民を対象にした住民投票で否決されていることから、構想への懸念が薄いとみられる大阪「市外」まで対象を広げることで、勝算を見込んだのだろう。
しかし、「地域の人がその地域のことを決める」という住民自治を定めた憲法92条に反すると、自民が批判を強めた。結局、高市早苗首相と維新の吉村洋文代表のトップ会談で、付則を削除することが決まった。
大阪市の将来像を市民自らが選択するのは当然だ。維新は党の悲願よりも市民の意思を尊重するべきである。
維新は来春の知事選と住民投票の同日実施を目指しており、都構想の制度案を作る大阪府市の法定協議会が既に設置された。
しかし、参加しているのは維新の知事と市長、府市議だけだ。公明、自民は席を割り当てられているが、「過去2回の住民投票の否決で民意は示されている」として欠席した。「日程ありき」への反発もある。
維新は都構想について「副首都にふさわしい大都市制度」として、府市の権限の重複による二重行政の解消などを訴える。だが、まず3回目の住民投票を来春に行わなければならない理由を明確にしなければなるまい。
維新は大阪府と大阪市の首長ポストを押さえ、府市共同の部局を発足させ、大阪・関西万博に代表される大規模事業を実現した。
これだけの実績を積み重ねても、なお大阪都構想は必要なのか。府市民に丁寧に説明することも欠かせない。
