周りの視線も少しは緩んできたかな。散歩や通勤でマスクを外して歩く姿が散見されるようになった。熱中症予防のためもあろう。少し気を使ってマスクを手に歩く。朝の外気が心地いい
▼なのに、この急変は何なのか。7月に入り、全国で新型ウイルスの感染がまた急増中だ。感染者は累計1千万人を超え、国民の1割近くが感染経験者になりそう。今回の「第7波」で、マスクはまた外しにくくなった感じだ
▼「もううんざり」。ニュース画面に登場する飲食店や旅行業者が同じ言葉でうめいている。昨夏も「第5波」の真っ盛りだった。多くの夏祭りは中止され、帰省をあきらめる家族も多かった。今夏は行動規制をせず、検査態勢を充実するという。でも急増ペースが続けば、先は見通せない
▼「3年続けて孫の顔が見らんねえ」。寂しいお盆を心配するおじいちゃん、おばあちゃんもいるだろう。「第7波だから『七転八起』だ」。こんなふうに気張れる人は、もはや少ないのかも
▼「ウイルスに打ち勝つ」といった、戦争のような発想はおしまい。そう訴えるのは医療人類学者の山本太郎さんだ。近年“善玉”ウイルスの発見が相次ぐ。胎児を守り、がんと闘う。温暖化防止や生態系維持に果たす役割もあるらしい
▼山本さんは著書「感染症と文明」などで以下のように説く。-まずは犠牲を最小限に抑える。そして、ウイルスと共生の道を探ろう。それは痛みも伴って、心地よいとはいえない妥協の産物なのかもしれないけれど。