「しあわせのその日にひとはなぜ震えて泣く/あんなに輝いた笑顔のあとで/こんなに愛されながら」。斉藤和義さんの曲「ウエディング・ソング」は、大きな喜びの中に万感の思いが交錯する結婚式の情景を歌う
▼そんな思いが、ネット上にあふれていた。サッカーJ2アルビレックス新潟から羽ばたき、強豪がひしめく欧州に移籍することになった本間至恩選手(21)へのサポーターの書き込みである
▼新潟市東区出身の本間選手は下部組織からアルビ一筋。祝福メッセージには、プロデビュー以前の古い写真が添えられたものもあり、多くの人々が自分の子どもや孫のように期待し、見守り、応援してきたことが伝わる
▼本間選手も才能を開花させて応えた。リーグ戦に18歳で初出場するとロスタイムに決勝弾。劇的なデビューを飾った。近年はエースナンバー「10」を背負い、俊敏なドリブル、狙い澄ましたパスやシュート、献身的な守備でチームをけん引してきた
▼いつしか「新潟の至宝」の称号で呼ばれるように。J1からの誘いもあったはずだが、新潟での昇格を口にしてきた。一方、欧州でプレーする夢も同じように温め続けてきた
▼記者会見で「昇格争いの中、途中で抜けてしまうことが本当に申し訳ない」と語った。替えのきかない選手である。それでも、チームやサポーターは笑顔で送り出した。多額の移籍金を残してくれた“孝行息子”でもある。世界の舞台に躍り出た至宝にこの秋、昇格の吉報を何としても届けたい。