サッカー東アジアE-1選手権を戦う日本代表の森保一監督を新潟市内で見かけたことがある。萬代橋を一人、沈思黙考して歩いていた

▼J1広島を率いていた数年前、当時J1だった新潟とのアウェー戦に臨む日の朝だった。監督は常に結果を求められる過酷な稼業。少し孤独感も漂うような姿が妙に印象に残っている

▼カタールW杯まで4カ月。7大会連続出場を決めるまで日本の指揮官は何度眠れぬ夜を過ごしたことだろう。負けが続けば一気に進退論が浮上する世界だ。最終予選は黒星発進と難産の末の突破だった。喜びもつかの間、本大会の組み合わせに天を仰いだファンもおられよう。1次リーグはともに優勝経験のあるドイツ、スペインと同組に。厳しい戦いが待つ

▼前回ロシア大会で森保さんはコーチとして臨んだ。初のベスト8入りを目指した強豪ベルギー戦は一時2点リードしながら終盤に大逆転された。その悔しさは骨身にしみているはず。苦い経験を生かせればいいが。名前の漢字の並びから愛称はポイチ。愛らしい呼び名とは対照的に試合ではメモ帳を手放さない姿を見せ、緻密な印象を受ける。かつて新潟でコーチを務めた経験もある

▼「日本サッカーを日本化する」。5月に亡くなったオシム元日本代表監督の言葉を指針にしているという。日本人の特長である俊敏性や勤勉さを生かせば、強豪国とも十分に戦えるとの名言を胸に刻む

▼W杯が刻々と近づく。きょうもどこかを歩いて策を練っているのだろうか。

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