「リングにかけろ」は週刊少年ジャンプに掲載された昭和50年代の人気漫画だ。国内各地から集まった少年ボクサーが戦う物語。少年ジャンプのモットーとされる「友情、努力、勝利」を詰め込んだような作品だ

▼主要登場人物の一人に河井武士がいる。新潟県代表の選手で「越後長岡の若武者」と呼ばれる美少年。必殺技「ジェットアッパー」で敵を華麗に倒す。人気キャラが同じ県人であることは当時小学生だった筆者には誇らしく、行ったことのない長岡にも憧れた

▼「周りは駐車場だらけだよ」。先日訪れた長岡市の小料理店で、店主がぼやいていた。街が寂れたとため息をつき「もう新潟市とは比べものにならない」とつぶやく。人口78万の新潟と26万の長岡。県内1位と2位の市の差は確かに大きい

▼とはいえ、知名度やイメージといった「ブランド力」で言えば長岡も負けていない、むしろ上ではないかと思う。河井武士の名前の由来となったであろう長岡藩家老の河井継之助は映画「峠 最後のサムライ」となり、全国に長岡の名を売っている

▼戊辰戦争後、長岡に送られてきた救援米を学校設立資金に充てた「米百俵」の故事も有名だ。長岡の花火は日本三大花火の一つに数えられ、全国から人を呼ぶ。長岡空襲を経験した平和都市としての顔もある

▼隣の芝生は青く見えがちだ。他と比べて劣っていることを嘆くより、足元にある宝物を見つけ、磨く。そうして地域同士が切磋琢磨(せっさたくま)することが地方の創生につながるはずだ。

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