子どもが通う幼稚園の運動会が開かれた。感染流行「第7波」に揺れる中、会場につるされた万国旗が少しばかり華やかなムードを作り出し、園児は元気に駆け回った
▼1年前の記憶と重なった。ウイルス禍による延期を経て、なおも開催の是非に揺れた東京五輪である。人気のゲーム音楽が流れる開会式で、主役の選手らは母国の旗を手に屈託のない笑顔で歩いていた。その表情にはほっとさせられた
▼「スポーツの力」は人の心や社会を豊かにするという。報道でも決まり文句になっている。五輪の究極の目標はスポーツを通した人間形成と世界平和だ。東京大会ではさらに復興の発信や多様性の尊重、大都市の課題解消など、数多くの旗印を掲げた。多くのことを求めすぎた感もある
▼実質的な経費は2兆円を超えるともされる。巨額の経費との帳尻が合うように見せたかったのか。大会組織委員会が発表した数百ページに及ぶ報告書では成果ばかりが強調された。いささか誇張や強弁ではないかと言いたくなる部分もある
▼組織委前会長の女性蔑視発言に至っては「ジェンダー平等や多様性と調和の重要さを再認識する契機となった」と評した。不祥事さえ功績とする感覚に違和感はぬぐえない
▼負の遺産となるのかもしれない。ここへ来て疑惑も浮上した。組織委の元理事が代表を務める会社が大会のスポンサー企業から多額の資金を受領していたという。大会前に唱えられた「アスリートファースト=選手第一」の理念がむなしく響く。