南魚沼市塩沢にある塩沢信用組合の本店外観は白壁の金蔵をイメージしている。かつて宿場町として栄え、今は雁木(がんぎ)が連なる牧之通りに調和してよく映える。16年前に通りが整備されたのを機に新築した
▼地域貢献の取り組みにも目を引くものが多い。寄付金を毎年募り、一人親の高校生に返済不要の奨学金を贈っている。地元の中小企業に就職した若者たちが職場で孤立して離職する傾向を減らそうと、会社を超えた「地域同期会」という交流イベントを先月初めて開いた
▼こうした地域目線の柔らかな発想はどこにあるのか。理事長の小野澤一成さんは経営者らの相談や要望を真剣に聞き、それに応えようとする姿勢を大事にしてきたことを挙げる
▼5年前には営業ノルマを撤廃した。金融機関では珍しい。「借りてください」という気持ちが強いと、相手の話を聞くのもそぞろになってしまうとの考えからだという
▼その分、企業の収益を改善する本業支援に力を入れ、従業員には社会貢献などを通して多くの経験を積んでもらった。こうした経営方針が、毎年の黒字につながっているようだ。来年9月には名称を「ゆきぐに信用組合」に変え、営業区域を長野県栄村や十日町市全域などに拡大する
▼金融業界は、人口減少や地域の衰退、低金利で厳しい状況が続く。合併や店舗削減、サービスの縮小も相次ぐ中、小野澤さんは「弱者を排除しない金融事業を今後も続けたい」と前を見据える。今どきなかなか聞けない言葉が胸に響いた。