「しまいのしょうぶ あそこまで ジャねもコッパねも のまんねように」。阿賀野市に残るわらべ唄は、水遊びしていた子どもが、泳ぎ納めに歌った。「ジャ」はヘビ、「コッパ」はカッパ。昔はカッパに引っ張られておぼれないよう、子どもながらに注意していた
▼暑い日、エアコンをつけて部屋にこもる。ネット動画で清流のせせらぎや水車の涼やかな音を流す。昔の子どもらと大違いだ。こんな自らの消夏法を少しさみしく感じてしまう
▼暑さしのぎに怪談を聞く伝統がある。カッパはいたずら好きで、すぐ人に捕まるとんまな印象もある。寒気がするような化け物ではないが、夏を代表する水辺の妖怪には違いない
▼本県には多彩なカッパ伝説が残る。人に取られた手を返してもらうお礼に、妙薬の作り方を教えた-。江戸時代のそんな伝説が込められた湿布薬を、新潟市の猫山宮尾病院が1989年まで製造していたのは有名だ
▼赤飯やキュウリ漬けなどをワラに包み、川に流す風習もあった。中ノ口川筋では「カッパ祭り」が10年ほど前まで続いていた。水難防止に加え、干天で田んぼが水不足にならないようカッパにお願いしてきたのだろうか。川の危険を子どもに教えるのも、カッパの話が一番効いた
▼五泉市の民俗学者、駒形覐(さとし)さんによると「水辺が多く稲作が盛んな本県は、カッパを特に敬い畏れた」。大規模な水害が無残な爪痕を残した今夏である。これ以上、天を仰ぐことがありませんように。カッパにも祈りたい。