銀行名で、カード利用が本人のものかどうか確認したいという趣旨の電子メールが届いた。見慣れたロゴマークが入っており、家族が利用する金融機関である。とはいえ自分は口座もカードも持っていない

▼改めて銀行の公式サイトをのぞくと、同じ文面が不審メールとして紹介されていた。リンク先で個人情報やパスワードなどを盗み取ろうとする詐欺のようだ。ネットに不慣れな高齢者が見分けるのは難しかろうと思ったが、どうも年齢には関係ないらしい

▼広島県などを購読エリアとする中国新聞が先日、詐欺被害に遭った記者の体験を載せていた。その記者は25歳。携帯料金の未納があるというメッセージに従って電子マネーをだまし取られたという。日ごろ詐欺事件も取材していた

▼本県でも特殊詐欺被害が激増している。6月までの半年の被害総額は暫定値で2億4458万円。昨年1年間を上回った。息子や医師を語る「オレオレ詐欺」が目立つらしい

▼多くの手口に共通するのが被害者に「一刻も早く問題を処理しないといけない」と思わせることだ。犯人は被害者を焦らせ、冷静な判断力を奪う。いったん落ち着けるかどうかが分かれ道だ。今夏は水害があった。心身が疲弊した被災者が狙われるケースも多いと聞く

▼中国新聞の記者は「自分はだまされないという過信があったのは確か」と記事に書いていた。10代からスマホを操っていただろう若者さえ被害に遭うのだからと、いささかくたびれたわが身に言い聞かせる。

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