旧経営陣を不起訴にした検察の判断を市民目線で全て覆し、捜査の甘さを指摘した。検察当局は強い姿勢で再捜査に臨んでほしい。

 原発がある自治体関係者などからの金品受領や報酬補塡(ほてん)を巡る問題で、昨年11月に不起訴となった関西電力の旧経営陣9人について大阪第2検察審査会は「起訴相当」「不起訴不当」と議決した。

 大阪地検特捜部が嫌疑不十分として立件を見送ったのは、関係者の死去などで供述が得られず、確実に有罪が取れるとの結論に至らなかったためだ。

 面目をつぶされた形の検察は、市民感覚で下された議決の重みを真摯(しんし)に受け止めねばならない。

 会社法違反(特別背任)などで市民団体が刑事告発した問題行為は大きく二つある。

 一つは、経営不振で削減した役員報酬について、旧経営陣が退任役員とひそかに嘱託契約を結び、18人に計2億5900万円を支払っていたことだ。

 検察審査会は、報酬補塡を決裁した前会長と元会長の2人は起訴相当だと議決した。委嘱業務の内容はあやふやで、実態がほとんどない者もいたと断じた。

 議決書では、補塡を「電気利用者への裏切り」と指弾、「公共性の高い企業トップが身内だけに利益を図っていた」と非難した。

 当然の判断だろう。関電にガバナンス(企業統治)が欠如していたと言わざるを得ない。

 もう一つは、関電高浜原発が立地する福井県高浜町の元助役(故人)から、旧経営陣が繰り返し金品を受領した問題だ。

 第三者委員会の報告書などは、関連会社の元役員らも含め83人が総額約3億7千万円相当を手にしたと認定した。

 議決では、元社長ら2人には「収賄罪が成立する余地が十分ある」と指摘、不起訴不当とした。さらに「電気料金を懐に入れたに等しい」と断罪した。

 金品受領の追加納税分を関電が負担する方針を決めた業務上横領などの疑いでは3人を起訴相当に、元助役の関連会社に不適切な工事発注をしたとする容疑では7人を不起訴不当とした。

 受領金品には地元に支払われた原発マネーの還流疑惑もある。

 関電が4月に公表した調査報告書は、元助役の関連会社との取引で、原発関連の土砂処分や不動産賃料に関して通常より高値で契約していたことを認めている。

 審査会は検察に対し、強制捜査や再度の事情聴取、メールなど電子データの解析を求めた。真相解明への期待に検察はさらなる捜査で応えるべきだろう。

 議決について、関電は「当社は当事者ではない」とひとごとのような態度だが、旧経営陣の問題行為を許してきた組織としての自覚を深める必要がある。失った信頼を取り戻さねばならない。