日本を代表する商用車メーカーが、長年にわたり車の測定データを改ざんし、うその報告書まで国に出していた。社会の信頼を裏切った責任は大きい。

 風通しの悪い内向きな企業体質が不正の温床になっていたとの指摘を、経営陣は重く受け止めなければならない。

 日野自動車は、今年3月に公表したエンジンの排出ガスや燃費試験のデータ改ざん問題に関し、外部有識者による特別調査委員会がまとめた報告書を発表した。

 それによると、排ガスの不正は少なくとも約20年前から行われていた。2016年の排出ガス・燃費試験の測定データに関する国土交通省の調査に対し、不適切な事案はないとする虚偽の報告をしていたことも明らかにした。

 国の認証試験の途中で排ガス浄化装置を新しい物に交換したり、測定装置の操作パネルで実際より優れた燃費性能が示されるよう手を加えたりしていた。

 不正があったエンジンの搭載車両の累計販売台数は、56万台超に上る。国交省は日野自側にリコールを指示するなどした。

 日野自は多くの顧客の信頼を損ねたことを深く反省し、原因や経緯、今後の対応などを丁寧に説明していく必要がある。

 看過できないのは、改ざんという暴走を許した企業体質だ。

 報告書によると、燃費の良い車両への減税措置などに向けた目標達成を幹部が担当部署に強く要求し、これを現場は「必達」と受け止めた。達成は難しい状況だったにもかかわらず可能だと報告し、不正に手を染めた。

 不正の背景として「できないことをできないと言えない風通しの悪い組織で、パワハラが生まれやすい」ことが挙げられた。

 組織内に自浄作用が働かなかったことも深刻な問題だ。

 国交省は16年、三菱自動車が起こした燃費不正を受けて各メーカーに対し測定データに関する報告を求めた。業界で不正が相次いで発覚し、社会から厳しい目が向けられていたにもかかわらず、日野自は過ちを正すことはなかった。

 こうしたことを踏まえれば、歴代経営陣の責任は非常に重い。

 特別委は、経営陣が改ざんを認識していた証拠は見つからなかったとしながらも、「現場に対するクルマづくりの『発注者』のような意識だったのではないか」と当事者意識のなさを批判した。

 国交省もチェック機能が働いていなかったと言わざるを得ない。不正を見抜けなかった経緯や問題点をしっかり検証するべきだ。

 製品の不正や従業員の自殺が相次いだ三菱電機など、他の企業でもパワハラ体質が問題の温床となったケースがある。

 内向きの姿勢を改め、顧客の信頼に応える経営に徹することが企業に改めて求められている。