新型コロナウイルスの流行「第7波」は、行動制限のないお盆休みが明けてから、全国各地で過去最多を更新している。

 感染拡大を防ぎつつ社会経済活動の回復に取り組むとしてきた岸田文雄首相も、夏休みの間に自身の感染が確認され、両立の困難さを露呈した格好だ。

 急ぎたいのは、業務量が増え続けている医療現場や保健所の負担を減らすことだ。

 政府は手をこまねいているのではなく、流行中のオミクロン株の特性や感染状況を捉えて課題を整理し、適切な対策を早く講じなくてはならない。

 新型ウイルスの新規感染者は県内で19、20日と立て続けに4千人を超えた。全国では26万人を超え、爆発的な拡大が続いている。

 全国知事会は、感染症法で義務付ける新型ウイルス感染者の全数把握が医療現場や保健所の負担になっているとして、早期に見直すよう政府に要望している。

 政府は当初、第7波が落ち着いた段階で見直すとしていたが、内閣改造を受けて前倒しし、全数把握の見直し検討に着手した。

 専門家からは全数把握に代わる方法として、特定の医療機関を選んで感染状況を把握する定点調査の活用などが提案されている。

 現状よりも簡略化されれば、現場の負担減になるだろう。

 しかしそれによって感染状況を分析する精度が低下したり、入院勧告など患者への対応がおろそかになったりする心配はないか。

 患者の状態の把握や疫学的な調査の観点から、全数把握をすぐに廃止するかは検討の余地があるとする医師の指摘は理解できる。

 負担軽減と同時に、ウイルスの状況や患者の状態を適切に把握できる仕組みをつくりたい。

 感染状況で気になるのは、感染して亡くなる人が増えていることだ。第7波の死者数は、過去最悪の水準に達している。

 自治体から発表される重症者数は第6波のピーク時の4割程度だ。比較的少なく、重症化しにくいように映っていたが、どうやらそうではないらしい。

 発表が少ないのは、大阪府などが独自基準で集計していることが要因だという。国の基準を全都道府県に適用すると、重症者は第6波の9割に達する計算だ。

 重症者に数えられないまま、亡くなる患者も増えている。

 以前の重症者は肺炎で酸素吸入が必要になるのが典型例だったが、第7波では高熱で衰弱して腎臓が悪くなったり、敗血症になったりするなど、死亡までの経過が多様化しているという。

 政府が感染者の全数把握を見直すならば、重症者数は感染指標の一つとしてより重要になる。

 重症者の定義が、第7波の状況を適切に示しているかも検証し、見直すことが不可欠だ。