強大な与党による独善的な政権運営を防ぐには、野党が重みのある存在にならねばならない。だが現状はあまりに物足りない。
国会の論戦に緊張感を生むために、野党には与党と対峙(たいじ)できる勢力となってもらいたい。
先の参院選で敗北した野党第1党の立憲民主党は、選挙の総括を踏まえて執行部を刷新した。
泉健太代表は続投するが、幹事長を西村智奈美氏(衆院新潟1区)から岡田克也元副総理に交代させるなど、新執行部の柱に旧民主党政権で主要メンバーを務めたベテラン議員を据えた。
昨年11月の代表選出以来、泉氏は「政策提案型」を掲げてきたが論戦は埋没した。何をしたいのか伝わらず、力量不足が目立った。
新執行部では追及を重視するスタンスに切り替えて、岸田政権への対決軸を明確にする。
ベテランを多数起用する新体制は刷新感に乏しいが、政権への監視と批判を強め、野党の役割を果たすためにも、早急に土台を整え直さねばならない。
一方、野党第2党の日本維新の会は、代表選で党ナンバー2の共同代表を務めていた馬場伸幸衆院議員を新代表に選出した。
参院選では最重点区を落としたものの、議席を倍増させ、比例代表で野党第1党に躍り出た。
国政政党の源流に当たる旧日本維新の会の結成から間もなく10年になる。長年、党をけん引した松井一郎前代表に代わり、馬場代表の下で仕切り直しを図る。
馬場氏は松井路線を継承し、自民党に対抗する勢力を目指すとするが、松井氏は来春の大阪市長任期満了で政界を引退する意向で、発信力低下が危惧される。
両党とも懸念されるのは、新体制の発足に伴い、党内に火種がちらついていることだ。
立民は新執行部の人事で不満を持つ一部議員を取り込めず、泉氏の指導力不足があらわになった。
維新は、松井氏が代表選で馬場氏のライバルを出馬断念に追い込んだことが禍根を残した。
挙党態勢で力を発揮できるか。両党が試されるのはその点だ。
政治課題は山積している。
安倍晋三元首相の国葬は法的根拠の曖昧さなどが問われる。新型コロナウイルス対策や物価高対応などへの国民の関心も高い。
同じ野党とはいえ、維新は政策で自民と近い部分がある。立民との間で連携姿勢は乏しかった。
新体制で維新の政治姿勢の変化を注視するという立民に対し、維新は立民が旧態依然とした永田町の慣例で自民に向き合うなら一切協力できないとけん制する。
ただ、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題では、両党とも自民に実態解明を求める点で一致している。
両党は国会論戦を深めるために連携の在り方を模索してほしい。
