あってはならない園児の悲惨な事件がまたしても繰り返された。大切な子どもを預かる責任をどう感じていたのか、極めて疑問で憤りさえ覚える。

 静岡県の認定こども園で、3歳の女児が通園バスの中に置き去りにされて熱中症で死亡した。屋根のない所に駐車したバスの中に、約5時間にわたり放置された。気温は30度を超えていたという。

 バスの中からは空になった園児の水筒が見つかった。高温になった車内で飲み干した可能性がある。発見時、園児は上半身に服を着ていなかった。

 苦しかったに違いない。亡くなった園児や家族のことを思うと、言葉もない。

 園側は記者会見で、職員の思い込みや怠慢などのミスが重なり、事件を招いたと説明した。

 マニュアルでは、バスに園児が取り残されていないか2人以上で確認することになっていたが、バスを運転した理事長と同乗の派遣職員は車内の確認を怠った。

 スマートフォンアプリを活用した登園管理も、職員が画面の確認などを怠っていた。

 クラス担任は園児がいないことに気付いていたが、保護者からの連絡がないことに疑問を抱かず「無断欠席かも」と思い込んだ。

 どれか一つでも怠らなければ、悲劇は防げたはずだ。関係者の責任の希薄さは目に余る。

 本来の運転手が休暇で理事長が代わりに運転したという。理事長は「(車内点検などに)不慣れだった」と釈明し、病院に行く予定があり焦っていたとも述べた。

 園児を第一に考えていたとは到底思えない。

 同様の事件は昨年7月に福岡県でも起き、5歳男児が死亡した。

 政府はバス送迎時や登園時の人数確認といった安全管理の徹底を求める通知を各自治体に出していたが、教訓が全く生かされなかった。残念でならない。

 今回の事件を受け、政府は全国で通園バスの一斉点検を実施する。事件を検証し、10月中に安全確保のためのマニュアル整備など、緊急対策をまとめる方針だ。

 原因を徹底的に解明してもらいたい。これ以上過ちを繰り返してはならない。

 通園バスに限らず、散歩などの園外活動中に園児が置き去りにされるケースは相次いでいる。内閣府によると、2021年に起きた保育中の事故は、置き去りを含め、全国で2347件に上る。

 背景には、保育現場の慢性的な人手不足もあるだろう。人手の確保が難しい状況であればなお、事件はどこでも起こりうることだと受け止めて、二重三重のチェック態勢を講じることが欠かせない。

 現場の職員は改めて、子どもの命を預かっているということを胸に刻み、基本的な安全対策を徹底してほしい。