「辺野古ノー」を掲げる現職が勝利し、明確な民意が改めて示された。政府は沖縄の声を尊重し、協議のテーブルに着くべきだ。
任期満了に伴う沖縄県知事選は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設反対を訴えた現職の玉城デニー氏が再選を果たした。移設容認の元宜野湾市長佐喜真淳氏ら新人2氏を破った。
県知事選で移設反対派が勝利したのはこれで3回連続となる。2019年2月の県民投票でも移設予定地の埋め立てに反対の声が7割超を占めた。過重な基地負担に反対する民意が4度も示された意味は重い。
玉城氏は当選後、「県民の思いは1ミリもぶれていない結果だ」と振り返った。
選挙戦では移設反対の勢力「オール沖縄」が全面支援した。高い知名度を生かして優位に進め、自民、公明両党の推薦を受けた佐喜真氏に6万票以上の差を付けた。
佐喜真氏は前回選では移設の賛否を明言しなかったが、今回は普天間飛行場の危険性除去を「現実的な方策だ」として容認を表明した。自民幹部らが沖縄入りして、てこ入れした。
だが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る政権批判もあり、浸透しなかった。
結果を受けて岸田文雄首相は辺野古移設を念頭に「県民の理解をいただき進めているが、今後もその努力を行わなければならない」と述べ、移設が「唯一の解決策」との方針を崩していない。
民意を直視せず、移設を強行しようという姿勢が改めて際立つ。
政府が沖縄振興予算と基地の受け入れを絡めるような手法を取ってきたことも看過できない。
沖縄は、新型ウイルス禍で主力の観光業などが打撃を受けている。子どもの貧困問題も深刻で、対策は喫緊の課題だ。
玉城氏は23年度沖縄振興予算の概算要求で3千億円台の復活を求めたが、内閣府は知事選告示直前に2798億円とする方針を決めた。22年度に比べ200億円の大幅減額となる。
玉城氏サイドが「政府の言うことを聞けとの脅しだ」と反発するのは当然だ。
辺野古移設を巡っては、予定海域で軟弱地盤が見つかり、防衛省は改良工事のため計画変更を県に申請した。これに対し県は、環境破壊などを理由に不承認としており、政府と裁判で争っている。
沖縄は日本復帰50年が過ぎた今も米軍専用施設の約7割が集中する。米軍関連の事故や犯罪は絶えず、基地周辺では人体に有害な物質も水道水源から検出されている。日米地位協定が足かせとなり、抜本解決ができていない。
玉城氏は政府に対し、辺野古移設に関する協議の場を求めている。岸田政権はこれ以上、沖縄の民意を軽んじてはいけない。
