地球温暖化の影響でこれからも前例のない規模の災害の発生が予想される。防災意識を高め、普段からの備えを徹底したい。

 最強クラスに発達した台風14号は18日、鹿児島市付近に上陸して日本列島を縦断、日本海を進んで新潟市付近に20日、再上陸した。東北を横断して太平洋に抜け、温帯低気圧に変わった。

 最も勢力が強かった17日には、中心気圧910ヘクトパスカル、最大風速55メートルを観測した。気象庁の担当課長が「本でしか読んだことがないような記録的な台風」と驚くほど急速に発達した。

 気象庁は九州上陸前、沖縄県以外では初めて宮崎、鹿児島両県に台風による特別警報を発表した。「伊勢湾台風に匹敵するか越える」と強調した。

 宮崎県で2人が死亡、広島県で1人が行方不明となり、負傷者は多数に上る。人的被害を完全に防ぐことはできなかった。

 しかし、上陸前の勢力からすれば、被害を極力抑えることはできたのではないか。

 上陸時は観測史上4番目に中心気圧が低かったが、陸上寄りに進路を取り、中国大陸の高気圧の影響により勢力が急速に衰えたことは幸いだった。

 専門家は上陸後の勢力を予測することは難しく、不確実性があると指摘する。気象庁は情報の出し方について総括する方針だ。

 だが、命に関わる事態を想定する特別警報が早期に出されたことで、住民の避難が進み、被害の軽減につながった面はあるだろう。

 警戒レベル5の避難情報「緊急安全確保」や避難指示の対象は、16県の590万人超に上った。

 九州7県などは今回、台風が接近した時点で災害救助法を初めて事前適用した。逃げ遅れを防ぐため、昨年の法改正で避難所の早期開設を市町村に促すことができるようになった。

 コンビニ店の計画休業、鉄道の計画運休、ホテルへの住民避難など事前の防災対応も被害の拡大防止に有効だったに違いない。

 命を守り、被害を減らす取り組みを強化するため、今回の体験を全国で共有したい。

 専門家は台風が急発達した要因として、海面水温が高い状態が続いていることを指摘する。台風のエネルギー源である水蒸気が豊富に補充されるためだ。

 台風発達の目安は海面水温27度とされるが、14号のコースは29度前後と高かったという。

 気象庁と文部科学省が2020年にまとめた地球温暖化の影響報告は、世界全体の平均気温が4度上昇すると、日本の南海上で「猛烈な台風」が発生する頻度が増えるとしている。

 県内への台風再上陸は1996年以来だ。台風被害が比較的少ない本県でも、さまざまな災害が起こりうると想定して注意したい。