新型コロナウイルス禍からの社会経済活動の回復をうかがわせるが、地方への波及はまだ乏しい。回復基調を広げるには地方の活性化が必要だ。

 国土交通省は7月1日時点の都道府県地価(基準地価)を発表した。住宅地の全国平均変動率はバブル崩壊が影響する前の1991年以来31年ぶりに上昇に転じ、商業地、全用途も3年ぶりにプラスとなった。

 新型ウイルス流行で弱含みだった需要が大都市を中心に回復し、全体をけん引した格好だ。

 本県は全用途、商業地、住宅地の全てで前年より下落した。ただ下げ幅はいずれも縮小し、価格が上昇した地点も増加した。

 力強さは欠くものの、価格の上昇地点が増えたことは、下げ止まりの動きが広まったといえる。

 緩やかな経済回復を反映し、商業地では上昇した16地点のうち、12地点が新潟市中央区だった。再開発が進むJR新潟駅周辺を中心に上げ幅が拡大した。

 高層マンション建設や県内最大級のホテルが開業するといった動きがあった。

 一方で同じ中央区でも、長引くウイルス禍で飲食店が打撃を受けた古町地区は価格が低下した。

 感染拡大前まで外国人観光客でにぎわっていた妙高市や湯沢町など観光地も客足が戻り切らず、下落傾向が続いた。

 にぎわいを取り戻せるように知恵を絞りたい。

 住宅地でも上昇した地点のほとんどを新潟市内が占めた。上昇率が最も高かったのは、JR越後線の新駅設置が決まった中央区上所上2だった。

 利便性向上への期待感が価格を押し上げたとみられる。

 全用途では新潟市と聖籠町を除く28市町村で下落し、うち7市町村で下げ幅が拡大した。

 県内で地価の二極化が進んでいるようで気掛かりだ。

 専門家は、人口減少や少子高齢化といった構造的な影響が大きいと指摘している。

 人口減少対策に特効薬はないが、本県への交流・関係人口を増やす取り組みなどを通して底上げをしていく必要があるだろう。

 例えば、本県は災害時の対応を定めた事業継続計画(BCP)の拠点として着目されている。首都圏と新幹線で結ばれている利便性を生かし、地域と関わる人を増やしていくことが大事だ。

 ただ、本県は転出が転入を上回る「社会減」が前年よりも増え、1月時点で全国最多の5710人になった。

 ウイルス禍でテレワークが進んだが、進学や就職で東京を選ぶ若者が依然として多いのが現状だ。

 本県で暮らし続けていくためには、魅力ある職場を整備することも喫緊の課題だ。

 県全体で取り組みを進めたい。