急激な円安が日本経済に悪影響を及ぼしかねない状況下ではやむを得ない判断だろう。
介入の効果は見えたが、日米の金利差拡大は当面続き、過度な円安阻止を持続できるか不透明だ。
政府・日銀は円を買ってドルを売る為替介入を実施した。円買い介入は1998年6月以来、約24年ぶりとなる。
米連邦準備制度理事会(FRB)が21日(日本時間22日未明)に大幅利上げを決定した後、日銀は同じ22日の金融政策決定会合で、日本経済は新型ウイルス禍から立ち直っていないとして大規模な金融緩和策の維持を決めた。
市場はこれに反応し、円を売ってドルを買う投資家の動きが加速。外国為替市場で円相場が一時1ドル=145円台後半まで急落したことから、政府は22日、為替介入に打って出た。
鈴木俊一財務相は「投機による過度な(相場)変動を見過ごすことはできない」と述べ、介入の実施を表明した。
政府が「伝家の宝刀」を抜かざるを得なくなった背景には、国民の不満が募っていることもある。
8月の全国消費者物価指数は前年同月比で2・8%上昇したが、賃金上昇は追い付かず、「悪い物価高」が続いている。
介入後、円相場は一時1ドル=140円台前半まで急騰し、経済界からは評価する声も上がった。
だが円買い介入は資金となる外貨準備高が限られる。巨額の通貨取引がある外国為替市場を動かすには限界があるとみるべきだ。
介入は相手国の不利益になりかねず「禁じ手」とされる。単独介入に踏み切った政府は、国際社会にも説明を尽くす必要がある。
見逃せないのは、円安の主因となっている日米の金利差がさらに拡大する可能性があることだ。
米国は8月の消費者物価指数が前年同月比で8・3%上昇し、歴史的なインフレに直面している。
通常の3倍となる0・75%の利上げを重ねたが効果が出たとは言えず、FRBは利上げを継続する方針を明確にしている。
一方、日銀は利上げは日本経済に冷や水を浴びせるとして緩和策を維持する姿勢を崩さない。
物価上昇率は2022年度に2・3%に達し、日銀が目標とする2%を上回るものの、国際的な資源高が落ち着く23、24年度は2%を割ると見通し、今後2~3年は利上げの環境にないと説明した。
欧米では「景気より物価」を優先する動きが広がっている。スイス国立銀行も利上げを決め、世界の主要中央銀行でマイナス金利を続けるのは日銀のみとなった。
日銀のかたくなな姿勢が円安を招いていると指摘するエコノミストもいる。日本の孤立が鮮明になっていることには懸念がある。
経済の実情に合わせた政策運営を日銀は不断に模索してほしい。
