人をいかに引きつけるか、本県のPR戦略をはっきり示す機会にするべきだ。

 県が東京に構えているアンテナショップ「表参道・新潟館ネスパス」について、存廃を含めた在り方が議論されている。有識者による検討結果が年内に公表される。

 県が営業終了を打ち出したのは今年4月だった。営業を来年12月で終えると発表した。入居するビルが老朽化により建て替えられることに伴い判断したという。

 ネスパスがオープンしたのは、25年前の1997年だった。全国の自治体が消費者の反応を探ろうと、東京にアンテナショップを構えるようになっていた。

 本県は表参道という若者に人気の街をPR拠点として選び、観光情報などを発信してきた。

 2005年に特産品などの販売を始めると人気を呼び、09年度以降はほぼ毎年度、100万人を超える来館者があった。

 新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、来館者数は大きく落ち込んだが、21年度には60万人台にまで持ち直した。

 県は営業終了を発表すると同時に、新たな拠点について検討を始めると説明した。

 ただし花角英世知事は「店舗が必要かどうか」も議論の対象だと述べた。オンライン販売に切り替え、実店舗を構えないのだとすれば大きな転換になる。

 この施設がどういう存在なのか改めて考えたい。

 訪ねれば、地酒をはじめとした県産品が並び、笹団子の香りがする。新潟を身近に感じさせる。

 首都圏の人には目新しい。一方、郷里を離れた県人には郷愁を感じる場となり得る。

 交流の場としての側面もある。都会の子どもたちのために雪を運び込んだり、中越地震の復興支援に対するお礼の鍋を振る舞ったりしたこともあった。

 Uターンや移住を考えている人に向けた相談窓口もある。窓口併設の利点が生かされているのか、点検が必要だ。

 ウイルス禍によって、東京一極集中から地方暮らしへの流れがあるにもかかわらず、本県は受け皿になりきれていない。

 都内には、新潟県の物産だけを売る店が他にもある。そうした所とのすみ分けについても、検討の余地がある。

 5月に開かれた第1回の有識者会議では、ネスパスのようなPR拠点を都内に継続して置くことが大切との認識で一致したという。

 存続させるのであれば、他県のアンテナショップにはない特色を持たせることも考えたい。

 本県を酒、米、雪のイメージで売り続けるのかも問われる。インバウンド(訪日外国人客)が戻ったときを見据えた策を練りたい。

 そうした議論を重ねることが、新潟の魅力を磨くことになる。