どこまで国際秩序と平和を破壊するつもりなのか。偽りの民意を根拠に他国の領土を奪う暴挙は断じて許されない。

 国際社会が強く非難しているのは当然だ。結束してウクライナを支え、ロシアの非道を改めさせなければならない。

 ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ東・南部の計4州を併合すると宣言した。

 ロシア憲法は領土割譲を禁じている。領土奪還を目指すウクライナとの対話による紛争解決が一層困難になるのは必至だ。

 ロシア側は新たな「自国領」が攻撃されれば、核兵器による反撃を辞さないと繰り返してきた。プーチン氏は「はったりではない」とさえ言ってきた。

 ウクライナとの戦闘で劣勢をはね返すため、核戦力が使われるリスクが高まっている。極めて憂慮すべき事態と言わねばならない。

 ロシアは4州の併合について、「住民投票」の結果で民意が示されたことを根拠としている。

 だが、投票はまったく正当性を欠いている。

 親ロシア派が9月下旬に各州で強行した住民投票は併合支持が87~99%に上ったが、実際にはロシア側が銃を持って戸別訪問し賛成を強要したり、他地域から多数のロシア人を送って投票させたりするなどの不正が横行した。

 ウクライナ側が投票結果を「民意の捏造(ねつぞう)だ」と批判しているのは当たり前だ。

 国連のグテレス事務総長は、併合を武力や威嚇によるものだとして「国連憲章に違反する」と非難した。バイデン米大統領も「決して認めない」と断じるなど、各国は批判を強めている。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、制裁強化と国際機関からの追放でロシアを孤立させるよう国連に要請している。

 国際社会はウクライナの求めを重く受け止め、対処すべきだ。2014年のクリミア半島に続く併合をこのまま見過ごせば、国連憲章は無に帰する。

 プーチン氏が4州併合を強行したのは、ロシア軍が米欧からの武器提供を受けたウクライナ軍に反撃されていることが背景にある。

 4州をロシア領として「核の傘」に入れて、核使用の選択肢を示すことで、米欧に武器支援を停止させ、戦争から手を引かせる狙いがあるとみられる。

 ゼレンスキー氏は領土を奪還するまで戦う方針だ。戦闘が泥沼化し、ロシアが核を使う最悪の事態は何としても避けねばならない。

 ロシア国内では、軍事力不足を補うために発動された動員令への反発が強まり、若者らが次々と国外に脱出している。

 戦闘の長期化はロシアにも大きな犠牲を強いている。プーチン氏はさらなる破滅的な結果を引き起こしてはならない。