世界的な原材料費の高騰や急速な円安の進行で身の回り品の値上げが止まらず、医療費を含め家計への圧迫が強まるばかりだ。痛みが和らぐよう、政府はきめ細かな対策を講じてもらいたい。

 10月は食品の値上げが目立つ。帝国データバンクによると、2022年に値上げを実施、または予定する食品約2万品目のうち、10月は3割超に当たる約6500品目の価格が引き上げられる。

 ビール大手4社は、ビールや缶酎ハイなどの主要商品を1割程度の値上げに踏み切る。家庭用ビール類は約14年ぶりになる。

 乳製品やマヨネーズ、ソーセージなどでは、今年に入り複数回の値上げになる品目もある。

 外食にも波及し、回転ずしやファストフード、ファミリーレストランでも値上げが相次ぐ。

 8月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、前年同月比2・8%上昇し、消費税増税の影響を除くと、31年ぶりの伸び率になった。10月は値上げ品目が集中することで、伸び率が3%に到達するとも予想されている。

 中でも都市ガス代26・4%、電気代21・5%と、エネルギー価格が全体を押し上げた。

 政府はこの1年間の電気代の上昇幅を「家庭向けで約2割、産業向けで約3割」と指摘している。

 岸田文雄首相は、高騰する電気料金の激変緩和制度を創設すると表明した。10月末までに具体策をまとめる方針だ。

 電力会社への補助金支給を通じた料金抑制策や、国民、企業へ現金を給付する案などが検討されているという。

 一方で、政府が今年1月に始めたガソリンなどの燃油価格抑制の補助金支出は既に3兆円を超えている。電気代の緩和制度も巨額の財政負担が生じる可能性があり、財政規律が緩む懸念もある。

 ばらまきにならないよう効果的な対策を追求するべきだ。

 ウクライナ侵攻は状況が見通せず、エネルギー資源や原材料の輸入価格は高止まりが予想される。円安も当面続くとの見方が強い。

 最低賃金は全国平均で時給961円となり、1日に適用された。物価上昇が続く半面、現状は賃上げが追いついてはいない。

 内閣府は9月の消費動向調査で、向こう半年間の消費者心理を示す指数が、物価高が響いて2カ月ぶりに悪化したと発表した。

 節約志向が強まるなど消費への悪影響が長期化すれば、日本経済全体の衰退を招く恐れがある。賃金の底上げを後押しし、好循環につながるような政策が不可欠だ。

 75歳以上が加入する後期高齢者医療制度では、窓口負担が1日から変わっている。

 一定以上の収入がある人は、1割から2割に引き上げられる。3年間の激変緩和措置があるが、受診控えが生じないようにしたい。