急激な物価高や収束が見通せない新型コロナウイルス感染など、国民に影響する課題が山積みだ。しかし国葬や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を巡り、政権不信は強まっている。

 国民の疑問に答え、政治に信頼を取り戻す場にする必要がある。国民が納得できる論戦を与野党が展開できるか注視したい。

 臨時国会が3日、召集された。第2次岸田改造内閣の発足後、初の本格論戦となる。

 岸田文雄首相が所信表明演説で重点を置いたのは経済政策だ。演説全体の4割を充て、日本経済の再生が最優先課題だと訴えた。

 新しい資本主義の旗印の下で、「物価高・円安対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」の三つを重点分野に取り組むとしている。

 一方、従来主張した「成長と分配」のフレーズは消えた。

 世界的な物価高騰や急速な円安など経済情勢の先行きが見通せず、政権発足から1年で軌道修正を迫られたと言えるだろう。

 物価高対策では、高騰する電気料金について、料金負担を直接的に緩和する「前例のない思い切った対策を講じる」とした。

 家計負担は軽減されるが、巨額の財政負担を伴う政策だ。対策の妥当性や出口戦略を含む掘り下げた議論が欠かせない。

 国民の関心が高い旧統一教会を巡る問題で首相は、国民の声を受け止め、説明責任を果たしながら信頼回復へ取り組むとした。

 教団側との関係を巡る自民党議員の接点調査は不徹底さや曖昧さが目立つ。細田博之衆院議長は文書1枚の説明にとどめ、追加説明を求められた。表面的な調査では国民を愚弄(ぐろう)する。

 山際大志郎経済再生担当相は教団トップの韓鶴子(ハンハクチャ)総裁と対面したことを3日になって明かした。木原誠二官房副長官も新たな接点が判明している。首相の任命責任も問われよう。

 首相は演説で国民との対話姿勢を強調し「『厳しい意見を聞く』姿勢にこそ、政治家岸田文雄の原点があるとの初心を、改めて肝に銘じる」と述べた。

 国民の声に耳を傾けるのは当たり前だ。首相に求められるのは、耳にした厳しい意見を踏まえて実効性のある対策を講じ、指導力を発揮することではないか。

 今国会では安全保障を巡る議論も注目される。国際情勢が緊迫する中、新たな国家安全保障戦略の年末までの策定を目指しており、首相は抑止力と対処力の強化を「最優先の使命」と位置付けた。

 敵基地攻撃能力(反撃能力)の保持など防衛・安保を巡る議論が前のめりに進む可能性がある。

 緊張感のある論戦を期待したい。それには野党が建設的な質問で政権を追及できるかにかかる。野党も責任を自覚してほしい。