平和と安全を脅かす挑発行為がエスカレートしている。日本列島を飛び越えるミサイルの発射まで強行するとは言語道断だ。政府は米国、韓国などと連携し、暴挙に歯止めをかけたい。
北朝鮮が4日午前7時22分ごろ、北部から東に向けて弾道ミサイル1発を発射した。
日本政府によると、ミサイルは青森県上空を通過し、約20分間で約4600キロ飛行した。日本列島の東約3200キロの排他的経済水域(EEZ)外の太平洋に落下したとみられる。
中距離弾道ミサイル以上の射程を有すると推定され、北朝鮮のミサイルとしては過去最長の飛行だ。日本上空を通過するのは2017年9月以来、7回目となる。
被害情報は確認されていないが、落下物による大きな被害が生じかねない事態だった。
日米韓3カ国は「国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦」と強く非難し、日本政府は北京の大使館ルートを通じて厳重に抗議した。
暴挙に対し強い姿勢で臨むのは当然だ。国連での非難決議や制裁強化なども検討に値する。
北朝鮮の挑発は目に余る。ミサイル発射は巡航ミサイルを含めると今年23回目で、特に9月25日以降は計5回も発射した。
北朝鮮は、米韓が同26~29日に約5年ぶりに日本海で合同軍事演習をし、その後日本も加わって対潜水艦作戦の共同訓練を実施したことに強く反発した。
日本列島を越えたミサイルは、バイデン米政権の発足後初めてで、今回は米軍の要衝グアムにも届くものだ。米政権に揺さぶりをかける思惑もあるのだろう。
発射の狙いや飛行性能などの詳細について、情報収集と分析を急がねばならない。
政府はミサイル発射を確認後、全国瞬時警報システム(Jアラート)などを活用して国民に情報を発信した。北海道と青森県、東京都の島しょ部を対象地域に指定し、避難を呼び掛けた。
関係機関は対応に追われ、東北新幹線は一時運転を見合わせた。住民からはミサイル発射に不安の声が上がった。
防衛省は日本に飛来する恐れはないとして自衛隊法に基づくミサイル破壊措置は取らなかった。
国民への情報提供や危機対応について、政府はしっかり検証しなければならない。
北朝鮮はミサイルの開発を続け、7回目の核実験を強行する公算が大きい。
岸田文雄首相は防衛力の大幅強化を掲げている。米韓も軍事的圧力を強めている。緊張のさらなる激化が懸念される。
北朝鮮の核・ミサイル開発にブレーキをかけさせるには、日米韓が緊密に連携し、対話の道を開くしかない。岸田政権は事態打開に資する外交に一層注力すべきだ。
