県下最大の都市で、日本海側唯一の政令市の求心力をいかに高めていくか。その道筋を巡る論戦を深めてもらいたい。

 任期満了に伴う新潟市長選が、あす9日に告示される。投開票は23日に行われる。

 立候補を表明しているのは、現職で再選を目指す中原八一氏、新人で共産党新潟地区常任委員の鈴木映(えい)氏の2人だ。いずれも無所属での出馬を予定する。

 中原氏には1期目の市政運営が評価される選挙になる。

 元自民党参院議員で自民、公明両党など保守系市議らが支えているが、特定政党の推薦や支持は求めない。前回市長選を争った県議と市議も支援に回っている。

 1期目の成果は、行財政改革で就任前に33億円だった基金残高を100億円超に増やしたことだ。また、県内市町村で最低水準だった子ども医療費の助成対象を拡大したことも挙げられる。

 オンラインの公開討論会では「5年連続で収支均衡した当初予算を組めた。財政健全化の道筋は付けられつつある」と強調した。

 鈴木氏は告示まで3週間をきって出馬表明した。不要不急の大型事業の見直し、子育て環境の整備などを掲げている。

 公開討論会では「政令市の中で民生費の割合は最下位クラス。暮らし、福祉の向上のために予算を増やすべきだ」と訴えた。

 向き合わねばならないのは、深刻な人口減少だ。政令市に移行した2007年には約81万人だったが、今年4月の推計では78万人を割り込んだ。

 死亡数が出生数を上回る自然減が年々拡大している。両氏とも訴えるように、出産・育児など子育て支援策が重要なのは当然だ。

 転出が転入を上回る社会減は20~24歳の流出が目立つ。抑制するには企業誘致などで就労先となる産業を創出し、既存の産業振興を進めていくことが欠かせない。

 全国の政令市で最も低い市民所得を上げるため、有効な方策を講じてもらいたい。新潟市が拠点都市として力を発揮すれば、県全体の底上げも期待できる。

 暮らしやすい都市基盤の整備も求められる。幹線道路を除く新潟駅周辺整備事業が25年ごろ完了する。市中心部や各区の再整備をどう進めるのか示してほしい。

 予算が限られる中、大型事業のあり方、公共施設の再配置などの具体像も示すべきだ。身近な生活インフラの整備が取り残されることがあってはならない。

 来年は、先進7カ国首脳会議(G7サミット)の広島開催に合わせ、新潟市で財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。

 ウイルス禍の収束後を見据え、魅力ある都市として住民やインバウンドを含む観光客を引きつける方策をどう語るか。そこにも注目して投票先を見定めたい。