地域と経済が感染拡大前のような活力を取り戻す第一歩になることが期待される。

 流行「第7波」は落ち着きつつあるが、なおウイルス禍にあることを念頭に感染対策を講じ、交流の輪を広げていきたい。

 政府は11日、新型コロナウイルスを巡る水際対策を大幅に緩和した。1日当たり5万人だった入国者数の上限を撤廃し、感染が疑われる場合を除いて入国時の検査や待機は不要になった。外国人観光客の個人旅行も解禁した。

 国際線を運航している空港の到着ロビーは、制限緩和を待ちわびた訪日客でにぎわった。

 多様な国の人々が行き交う光景が戻ることは喜ばしい。円安も訪日客の増加を後押しするはずだ。

 政府はインバウンド観光を復活させ、訪日客による消費額の年間5兆円超の達成を目指す。実現すれば過去最高となる規模だ。

 感染拡大で政府が中国湖北省に滞在歴のある外国人の入国を拒否したのは2020年2月だ。異例の措置だったが、同年末には対象が全ての国と地域に拡大した。

 規制は2年半を超え、その間、観光関連業者は苦境に置かれた。

 本県でも、19年に約48万人だった外国人延べ宿泊者数は、21年には約3万人まで落ち込んだ。

 インバウンド需要の回復を心底願う人は多いに違いない。

 国際線は受け入れ準備が整った空港から順次拡大する。新潟空港など地方空港も急いでほしい。

 地域の関係者は訪日客の増加に備えて、付加価値の高い観光地づくりに再び磨きをかけたい。

 水際対策の緩和とともに、国内では「Go To トラベル」に代わる全国旅行支援が本県など46道府県で始まった。宿泊代の割り引きや買い物に使えるクーポンで政府が国内旅行の活性化を促す。

 旅行支援は感染が再拡大した場合、都道府県の判断でも中止できるが、自主的な基準を設けたのは兵庫など3県にとどまる。状況に応じて適宜対応する自治体がほとんどで混乱も懸念される。

 判断に迷う場合には政府が明確な方針を示す必要がある。地方に丸投げしてはならない。

 第7波は今年7月に始まり、1日の新規感染者は26万人、死者は340人を超える日もあった。

 岸田文雄首相は、緊急事態宣言などの行動制限を行わずに今年の夏を乗り切れたと強調する。感染者や死者の多さを忘れたかのような口ぶりだ。

 冬場には第8波の流行が懸念され、これまで以上の規模になることを危惧する専門家もいる。

 首相は一貫して社会経済活動の回復に軸足を置くが、感染状況を軽視せず、感染防止との両立を図ることに心を砕いてもらいたい。

 私たちはワクチン接種の必要性などを十分考えて感染防止対策を施し、行動を広げていきたい。