武力行使も辞さぬという強国路線は、国際社会の平和と安定を脅かす。権力集中による弊害で国民に不満が鬱積(うっせき)すれば、政権基盤がゆらぐことにもなりかねない。
中国共産党の第20回党大会が北京で開幕した。習近平党総書記(国家主席)は今後の施政方針を示す活動報告で、異例の3期目入りに向け2期10年の実績を誇示し、今世紀半ばまでに社会主義「強国」を建設する決意を表明した。
5年に1度開かれる党大会は、党の路線や指導部人事を決める最重要会議と位置付けられる。
党の慣例では党大会の時に「68歳以上は引退」とされてきたが、69歳の習氏がこれを破って続投するのは確実とみられる。
大会では最高規則である党規約を改正し、習氏が不動の権力と権威を固めたことを意味する「二つの確立」を盛り込む見通しだ。
習氏はこれまで「建国の指導者」毛沢東と並ぶ絶対的権威の確立を図ってきた。大会を足掛かりに権力集中をさらに強め、批判を許さない統治を続けるとみていい。
とりわけ危惧の念が募るのは、外交・軍事面での強硬姿勢だ。
習氏は活動報告で、台湾統一を「歴史的任務」とし、武力行使の放棄は約束しないと明言した。
米国など「外部勢力の干渉」をけん制しつつ、核戦力の強化を示唆し、今世紀半ばまでとしていた「世界一流の軍隊」建設の計画前倒しにも触れた。
中国は8月のペロシ米下院議長の訪台を口実に、軍事圧力を強めている。同月の軍事演習では弾道ミサイル5発を日本の排他的経済水域(EEZ)内に落とした。
「力による現状変更」で台湾統一を狙い、日本を含む周辺地域の平和を脅かす暴挙は許されない。習指導部は国際秩序を尊重しなければならない。
内政・経済面では独自の発展モデル「中国式現代化」を進め、経済格差を解消することを訴えた。
しかし、国内のIT企業に対する規制を一方的に強化したことで、成長エンジンが勢いを失ったとの批判が出ている。
習指導部はウイルス禍を抑え込む「ゼロコロナ」政策を党の成果に上げ、引き続き経済活動や市民生活を厳しく制約している。
党大会直前には、厳戒の北京で習氏の罷免を求める横断幕が掲げられた。当局がすぐ撤去したが、市民の強い不満の表れといえる。
少数民族の弾圧や、香港で国家安全維持法(国安法)を施行し民主派を排除してきたことは、米欧から強い批判を受けてきた。
ロシアのウクライナ侵攻では、大国として解決を図ろうという姿勢も見えない。
習氏は活動報告で「愛される中国のイメージ」を発信すると強調したが、素直には受け止められない。国内外の強い懸念にもっと耳を傾けるべきだ。
